ホームレスの方==悪ではないけど。 - ホームレスの方と図書館問題

via:図書館がホームレス排除に苦心しているとかいう件についての私からの提案 - planet カラダン
上のエントリに対する、私のブクマコメントが色々誤解受けてそうなので、補足がてら書きたいと思います。

舞城氏の作品「土か煙か食い物」を読了したばかりでその本の影響下に有り過ぎる私ですが、出来るだけそちらの文体に引っ張られないようにしたいと思います。

まずは元エントリより事の流れ。

  • 図書館におけるホームレスの方の扱いについての記事が上がる
    • ホームレスの方の対応として、女性専用席を設けた
    • しかし、これは女性だけ優遇された性差別でないのか、ホームレスの方に対する差別ではないのか
  • これに対するエントリ
    • ホームレスの方を追い出すのはとんでもない
    • ホームレスの方専用席を設けるくらいやって、図書館にホームレスの方を積極的に呼び込み、そこを糸口として個別のケアをやるべきだ
    • 図書館が福祉の窓口となり、福祉職員が出向くようなかたちで、図書館から福祉につなげる経路を作るなど

非常に大雑把ですが、簡単には以上のような流れです。ただ、元エントリをきちんと参照した上で、以下の私のエントリを読んで欲しいと思います*1

そして、私のコメントとそれに対するコメント

id:m-bird(=私)

排除すべきでないからといって対応せずに、図書館がそれ自体の機能をしなくなったら、それは不幸じゃない?この場合は、ホームレス向けの避暑施設等を作って対応・図書館は図書館の機能を、って事で。

id:thir

↓バカだなあ、それが「排除」なんだよ<図書館ではなく別施設で/ 純粋に新聞や雑誌読みに来るホームレスもいるのですが。彼らにも知識欲はあります。

という訳で、補足いたしますと

ホームレスの方だから排除するべきだ、という訳ではないです。図書館本来の使い方をしようとしていない方、本来の使い方をしている方に迷惑を掛ける方は図書館(という施設の利用を)遠慮して貰う、という事です。
ホームレスの方だからお引取り願う、では勿論id:thir氏の仰る通り、新聞を読みにきた等の「図書館としての」利用をしに来ている方に非常に失礼です。また、ホームレスでない方でも、酔っていたり、非常識な格好(例えば暑いからと言って下着のみとか半身裸とか)であったりするならば、勿論利用を断るべきだと思います。
何故ならばそこは「図書館」という名の公共施設であり、図書館という物は本を借りて読んだり、調べ物をしたり、そして本を保存することを目的としているからです*2。その様な場所で寝泊り・飲食、ましてや飲酒・喧嘩なんていうのは許されません(喧嘩が許される場所はもっともっと、限られてる気がしますが)。

元エントリでの違和感

大体、図書館で暖をとるホームレスが、本当に「ケンカ、居眠り、床に座りこむ…。声をかけるとよく殴られた」というような乱暴者ばっかりなら、「女性専用席」なんていう張り紙なんて無視して好きなように居座って酒盛りするんじゃないの? 「怖い」「乱暴」「酒臭い」という点を強調することで忌避されるべきホームレス像を作り上げておきながら、女性専用席程度の対策で十分効果が出ているって時点でこの記事は論理的に破綻してるんだよ。相手は無法者でもなんでもなく、張り紙に書いてあることをしっかり守ってくれる善良な人なんだから。

元記事のニュースでは"ホームレスの方==非常識"のように書かれてしまっていますが、これは確かに負のイメージをまず最初に植える為のものに思えます。しかし、張り紙の内容に従っていても、女性専用席以外で酒飲んでいたりイザコザを起こしていたりしたら、それは善良な方とは言えないんじゃないでしょうか。

「迷惑利用者」って言ったときの「迷惑」というのは誰基準なの? 多数決? じゃあもし、図書館において多くの人が迷惑に感じる所作(例えば、咳が止まらない)があったとして、そういう人がみんなから不快に思われていたとする。だったら何なの? 「公共施設を利用する権利」よりも「公共施設を快適に利用する権利」の方が上っておかしいんじゃない?

例えば、これがチャリティーの演奏会等に行って、という場合ではどうなのでしょうか。静かに聴いている中、咳が止まらなくなったり、子供が泣き出したりしたら、落ち着くまでは外に出るのではないのでしょうか。
もし、その方の「図書館を公共施設として利用する権利」で他多数の方の「図書館を図書館として利用する権利」が損なわれたのならば、これは前者の方に対応して頂くしか無いのではないでしょうか。

悪臭が気になる? だったら家に帰ればいいのです。あなたには帰る家があるんでしょう? 経済的に困窮しているために衛生状態を保つのにも苦心している人たちが、寒さや暑さを避けて図書館にやって来る。当然受け入れるべきだ。

これについては、難しい問題だと思います。図書館を図書館として利用しに来た方の悪臭(ホームレスの方にせよ、そうでないにせよ)が気になるからといって追い出すのは、その方の「図書館を図書館として利用する権利」の阻害になってしまいますよね。
私は、図書館問題についての本質はここだと思います。少し前で同様の話題の時に書かれたエントリ支援しろなんて言ってない。追い出すなと言ってるんだの、id:ceekz氏のコメントが非常に参考になります。

id:ceekz氏のコメント

まだホームレス(≒体臭がひどい人)が、読書活動をしていないようだから話を単純化しやすいけど(目的外利用はお断り!で解決)、ホームレスがその立場から脱却するために読書活動・学習活動を図書館で行っているとすれば、どう対応するのが良いんだろうね。
他の利用者(≒ホームレスよりも裕福な人)のためにホームレスを追い出すのか、ホームレスを受け入れて利用者に不便を強いるのか。
まぁ。図書館界の理想に従えば、後者になるんだろうけど。

とても、的確なコメントだと思います。図書館として利用しに来た方、しかしこの方が他の利用者の「"快適に"図書館を利用する権利」を侵していたとした場合こそ、対応を一番考えるべき部分です。

図書館の目的に沿っていない? だったらホームレスの人に、雑誌の一つくらい膝に乗せておいてくださいとアドバイスすればいいだけだ。

これは、図書館を図書館として利用している方々へ喧嘩を売っているようにしか見えず、今回一番腹立たしく感じた部分です。
私としては、上に書いてきた通り、「図書館を図書館として利用している方の権利」をまず考えるべきであると思っていますので、このように「図書館を利用しているポーズをしていれば問題ない」というのは非常に問題だと思います。

福祉窓口もシェルターも存在していますが、そういうところに直接出向くという発想がないホームレスも多いので、施設や福祉を周知させる場として逆に活用すればいいんじゃないでしょうか。タダで医療が受けられる制度があっても、それを知らずに病気を悪化させてる例も多いです。

これについては、「そういったサービスをしている窓口への案内をする」って事は非常に重要ではないかと思います。そのような施設を知らないから図書館のような場所に来てしまう、というのはあるでしょうし。ただ、最近の図書館って、このようなこと(公共福祉施設・サービスの案内)をやっていたと記憶しているのですが、やはり地方差があるのでしょうか。
但し、次のような意見に対しては、図書館の域を超えてしまうサービスだと思います。

ここで提案ですが、図書館側が積極的に福祉の窓口につなげればいいんじゃないでしょうか。巡回相談事業とかの一つの拠点にするとか。無論、ホームレスを追い出さないことが大前提です。各自治体が取り組んでいる(だろう)野宿者対策事業の内容を周知するための場として、またホームレスとそうでない人たちの交流の場として。つまり、ホームレス専用席を設けるくらいやって、図書館にホームレスを積極的に呼び込み、そこを糸口として個別のケアをやるということです。

この前半、窓口と繋げる(他の公共福祉サービスの課を案内する)とか、巡回相談事業の窓口というのは、非常に有効な手段だと思います。そして、実際にやっている所もあります。また、公共福祉サービス(元エントリを例に挙げれば"野宿者対策事業の内容の周知"等"
しかし、後半。後半。そう、後半。
"ホームレスとそうでない人たちの交流の場"というのは、図書館のサービスの域を超えてないでしょうか。ホームレスの方達とそうでない方達の交流ってボランティア以外に良く分からないのですが、お話したりケアしたりするんでしょうか。
他にもあるかもしれませんが、「公共福祉施設」で行う事であって、図書館で行う事でないと思います。

つまり私の意見としては

図書館は図書館として。
  • 図書館を図書館として利用していない人は、どんな人かに関わらず利用を断るべきだ。
  • 図書館に公共福祉サービス・設備を知らない人が、そういったものの代わりに利用する場合があるかもしれないが、それは図書館としての機能の範疇を超えているので、対応できないし、する必要はない
    • それをしてしまうと、全ての図書館を全ての福祉施設と複合化する必要が出てきてしまう
  • 但し、その公共福祉サービスが存在するという事を告知する・相談されたら案内できるような体制を作るのは必要である(既に行っている所はあるが)。
  • そして今回非難されるべきは、図書館ではなく、図書館にホームレスの方が集まっているのにそれを見過ごしていた行政側ではないか
    • 図書館側は、それがフェアであろうとなかろうと、問題に対処「図書館」としての機能を保とうと必死なだけである

以上です。

って……

元エントリ追記より

っていうか修正。図書館員にホームレスとの相談をさせたり、福祉への窓口的な業務をさせるという意味ではなかったんですが、「図書館側が積極的に福祉の窓口につなげればいいんじゃないでしょうか」この書き方だとそうなってしまいますね。

福祉職員が出向くようなかたちで、図書館から福祉につなげる経路を作るということです。巡回相談事業なんかは、今は民間団体が委託を受けてやってますが、図書館に立ち寄るということを巡回相談事業のプログラムに組み込むということです。福祉窓口もシェルターも存在していますが、そういうところに直接出向くという発想がないホームレスも多いので、施設や福祉を周知させる場として逆に活用すればいいんじゃないでしょうか。

あれ、上で言ってることと違……う?

追記(9/1 16:00)

id:y_arim氏のブクマコメ

「図書館を図書館として利用しないやつは誰であれアウト」ってのがすごい違和感。たぶん、テラ豚丼の話と通じると思うんだけどどうだろう

うーんと、どうやって言えば良いのだろうかなぁ、と思ったら、こちらのエントリ
図書館とホームレス問題の先行事例について
に私の言いたい事が分かりやすい表現で書かれていたので、引用します。

「ホームレスだから排除して良い」ということではない。図書館の目的を妨げるかどうかが問題なのだ。この判決後、ホームレスの利用問題に関して「図書館の目的を妨げるほどの迷惑行為」という判断が恣意的に行われないか、議論の種となっている。「ホームレスだから排除する」という本音を隠す建前に使われるという危険性を抱えているわけだ。実際には不衛生な利用者や迷惑行動を起こす利用者はホームレスでなくともいるし、図書館側がどのような基準で迷惑行為を認識するのかが課題となっている。

という事ですが、どうでしょう。ちょっと、私の表現が下手糞だったかもしれませんが、下のコメント欄と合わせて読んで判断して頂けると嬉しいです。その「テラ豚丼での違和感」ってのが具体的にどういうものか分からないので、もしこれでも「いや、そういう事じゃなくて」って事なら、指摘して頂けると嬉しいです。

次?エントリ:ホームレス差別、貴方が一番していませんか?

*1:やはりどうしても、要約などしてしまうと誤解が生じる部分がありますので

*2:つまりは情報にアクセスできる場所ですかね