オープンソースプロダクトがこの先生き残るためには〜FreeBSDを添えて〜

10/24(金)に、FreeBSDワークショップというものが開かれました。開催場所は、例によって飯田橋に移動してしまったIIJ本社です。主宰はAsiaBSDConなどを運営されている佐藤先生。元東京理科大、現東工大の先生。
話自体非常に分かりやすく、時折さらりブラックジョークを入れて笑いを取ってきたりもするので、聞いていてとても楽しい。流石佐藤先生。惚れる。

本エントリでは、FreeBSDワークショップの概要と、その中の空気(なぜか読めない)を簡単に意訳してご紹介したいと思います。なお、何か間違っていたら、ご指摘お願いいたします(凄い勢いで意訳している)。

FreeBSDがこの先生き残るためには

本ワークショップの主目的は、この一言に尽きるでしょう。
また、その手法としてFreeBSDに対して文句を言う場としてワークショップを展開する。これにより、離れてしまった開発者と利用者の距離を縮める。
海外では利用者がそれなりに多いが、日本では利用者がめっきり減ってしまった。なので、FreeBSDに対する不満を利用者から吸い上げ、佐藤先生が開発者コミュニティに対してその文句を持ち帰り展開する。
佐藤先生は、リリースエンジニアリングを担当されており、FreeBSDファウンデーションのメンバであり、FreeBSDのコミッタである。FreeBSDファウンデーションは、FreeBSDの開発を金銭的に支援したり、ユーザコミュニティを支援する組織。

ワークショップでは、通常の勉強会のように講師だけがしゃべるというものではなく、参加者側が色々な意見を言って議論できるようなものとする。
ということで、今回も自己紹介などで「何やっているのか」「不満」などが語られました。
これに対する私の意見は最後のほうに。

皆の意見不満にその場で佐藤先生がコメント

これが非常に面白いのです。幾つかご紹介。
バイスのサポートが少ない、などという意見に対しては現在企業などと連携して、サポートデバイスを増やそうという動きもある。けれど、それを行うには

  1. お金を出してデバドラを作って貰い、それをオープンソースで公開する
  2. FreeBSDサポートをすることによるメリットを企業に売り込む

のどちらかを行う必要がある。動いてはいるけれど、日々手探り状態である、ということでした。
pkgの更新が遅いことについては、ビルドマシンの調達までは行っているそうで、そのうち早くなるのではないでしょうか。
幾つかの鋭い意見については、コミュニティに持ち帰ります、という言葉があり、なかなかに面白い。

自己紹介+不満→佐藤先生の回答、というのがメインで一番時間をかけていたものですが、ここはちょっと省略という形で。
FreeBSDを仕事で使っている、プロダクトで使っているという人も結構いらっしゃって、表にみえてこないだけなのだなあって感じると同時に、そのように「現場で使われている」というのをもっとアピールする必要があるなあと思いました。

FreeBSD Foundationの立ち位置

FreeBSDに対してお金を出して、色々なサポートをするような立場。商標、ドメインの管理から、開発資金の提供など。
Foundationがお金を出したProjectは多く、DRMKMSとかなども該当し、成果は多く出ているとのこと。

元々はY!な会社から人が出ていてリリースエンジニアリングもきっちりされていたのが、そのうち大学の先生や趣味でやっている人が中心となってゆき、そのうちにリリースが遅れ始めてしまう。
これを是正しようという流れがあり、Foundation が設立。趣味から組織的な開発へとのシフト。

欠けているものの認識

会全般を通して、若者がいねえ、というので盛り上がってました。30代でも若手、20代がいると拍手!という状況(実際拍手が巻き起こった)。
初学者向けのドキュメントも少ないし、最近はブログなどの記事も減り、公式ドキュメントも何とか更新していくので精一杯、という認識。
日本においてはコミュニティも壊滅状態であり、海外の人から「ヘイ、日本のユーザコミュニティは今どんな感じなんだい?」って尋ねられた時に「うん、まあぼちぼちでんなあ」って誤魔化すのもツライという状況。まさか壊滅状態とは言えないし、と。

ユーザやそのコミュニティに任せていても回らない部分はある。例えばKirk McKusick のビデオ教材があるけれど、McKusickがスポットライトを浴びながら、延々とコードの解説をするDVD18枚組の素晴らしいもの。これを教材として翻訳したい、と思ってもお金が無い。お金重要。そういった問題を何とかしようと作った法人が、特定非営利活動法人BSDリサーチである。

ただし、受け皿つくっても入ってくるものがないとどうしようもない。ので、会社の人は金銭的にも協力をして欲しいし、個人の人も是非会員になって欲しい。

企業とFreeBSD

ユースケースを提示したのち、企業がFreeBSDを使う利点を示して行く。例えば、Linuxのメインラインに機能突っ込もうと思っても、なかなか難しいものがある。しかし、今のFreeBSDならば比較して簡単に取り込まれる。
これは、前述の通り個人主体の開発体制から、組織主導の開発体制となり、企業との連携なども積極的に行うようになっているため、というのがあるとのことです。

以下個人的な感想

上の記事のベースになった佐藤先生の話は、3時間のうち半分もないくらい。基本、おっさんたちの自己紹介と、おっさんたちが「若者こねえ」って嘆く時間でした。

で、私のいいたいこと

おっさんがうるさいからじゃないの?
っていう話です。私は2006年くらいからFreeBSDを使っているのですが、FreeBSD-users-jp MLも購読しているだけで投稿したことがあるのは2度くらいです。ユーザコミュニティに触れたことほとんどない。
AsiaBSDConは2009あたりに参加して非常に面白い話がきけたなあ、っていう思い手はあり、またBSD系の人たちと遊んだりはしましたけど、ユーザコミュニティには触れたことが無い。
なんでだろ、って考えてみたんですけど、やっぱりたぶんおっさんがうるさい。
「若者騙して使わせればいいんじゃね」「いいものだから、主観的には騙していないんだよ」
ってジョーク飛ばしているつもりかもしれないけれど、楽しいだけじゃ触れないですよ。
たとえば、Linux弄ってたらお仕事でも役に立つかなっていう分かりやすい利益はあるけれど、FreeBSD触っててお仕事……ってあまりないですよね。そうなると完全にホビー用途になってしまう。そりゃ面白いけど、そういうところに興味持ってくれる人は、そもそも切っ掛けさえあればFreeBSDだってねとびだってPlan9だって触る。
けど、そうじゃなくて若者の絶対数増やしたいんだよね?

時間の価値

若者が持ち上げられるのって、メタなことを言うと時間という金払っても手に入らないリソースが多く残っているからですよね。それはUnixを使っている人なら痛いほど分かっていると思っています。
そんな貴重な時間を使うのに、イマドキの若者は慎重になっている気がしていて、学ぶことがたくさんある中で、どれにステータスを振りわけるかっていうのを考えなきゃいけない。就職難だの少子高齢化だの自己責任だのって言っている中で、Unix学ぶならば楽しみつつ実益になるしってことでLinuxを選ぶ人がしぜん多くなるのも当たり前じゃないですかね?

だったらそれ作ってよ、おっさん

「もうみんないい立場だよね、若者騙してやらせようよ」
っていうの、ある種正解じゃないかな、って正直僕も思います。ただ、前半部分。いい立場だから、騙さなくてもBSD使ってて若者の益になるような仕事、つくってよおっさん。
例えば、ストレージアプライアンスを企業から買うんじゃ無くて、そこそこの信頼性でいいのはFreeBSDZFSNASにして仕事増やして、若者を雇う、とか。雇用大事。マジで。
あ、単に仕事だけ増えて人増やさなかったら意味ないからね。この時間のワークショップこれないじゃんね?

最後に

若者とは言えないし何もできないだろお前、っていう話はあるかもしれませんが、少なくともこうやってキーボード叩いて駄文たたき出す程度の環境には居ますので、ユーザとして、簡単なものでもいいから情報発信なり何なりしていきたいなあって思います。
コミケで薄い本とか……っておもったけれど、@whtapple 氏が以前「FreeBSD沼案内」とか出していましたね。私もやってみようかしら。20代のうちに。

主催者のかたにお願い、とすると、平日の開催だとなかなか遠方の人とか残業多めの方とか参加できなくてツライので、時折休日開催も混ぜてやってほしいなあって思います。これはFreeBSD勉強会にも同じことを言えますが……。

おまけ

コードは書けませんが、日本語は書けるので、「こういうネタで書いてよ」「ちょっと下読みしてよ」っていうのがあれば、ご連絡ください。商業でも余裕あるときなら承ります。
以下は参考リンク:
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