インターネットが崩壊する? - 動画サイトによるトラフィック増大
先日IIJの新卒就活者向け半日セミナー行ってきました。非常に面白い内容で、面白く聞けました。尚、今回のエントリの内容については、IIJの藤井直人氏のプレゼン内容を基にしたものです。
トラフィック増えてる?
最近良く聞かれた崩壊論としては、P2Pファイル交換ソフトによるトラフィックの増大でしたが、近頃はニコニコ動画・YouTubeといったような動画サイトのトラフィックが問題視されるようになってきました。
動画のトラフィックが増えてきており、それがP2Pのトラフィックと同等か、それ以上となろうとしている事が上の画像より分かると思います。しかし、それは本当なのでしょうか。次の画像は、国内の主要6ISPの曜日別のトラフィックです。
これを見ると、2004年と2006年度ではINとOUTのトラフィックの差が開いてきています。これは何を意味しているのでしょうか。これは、P2Pファイル交換ソフトのトラフィックの特徴で、アップロード・ダウンロードの両方が使われているという事を示しています。
また、トラフィックの山谷がはっきりしてきているのも、P2Pソフトによる24時間の回線使用によるトラフィックから、人間がウェブを見ての回線使用によるトラフィックへと変化してきていることが分かります。
では次に、通信量(ユーザ側から見たダウンロード転送量)の変化を見てみます。
将来予測(MB/day)
時期 | 最頻値 | 平均 | |
---|---|---|---|
2004 Apr | 26.2 | 110.6 | |
2005 Feb | 32.0 | 162.7 | |
2007 Jul | 65.7 | 483.2 | |
2008 Jun | 94.1 | 862.6 | |
growth/yr | 1.36 | 1.62 | |
2009 Jun | 121 | 1217 | |
2010 Jun | 164 | 1966 | |
2011 Jun | 223 | 3176 |
最頻値よりも、平均値の方が伸び率が高い事が分かると思います。これはヘビーユーザの増加を意味していますが、しかし、先に述べたようにP2Pヘビーユーザの数は余り伸びていないはずです。では、何が原因なのでしょうか。
これは今までP2Pを使わない「一般ユーザ」と言われていた層が、動画サイト等の転送量の多いサービスを多く使い始めたことが原因ではないかと予想されます。一般ユーザの、(トラフィック的な意味での)ヘビーユーザ化。分母が大きいだけ、転送量が爆発的に伸びる可能性を秘めています。
また平均の転送量が伸びてゆくことにより、設備投資に掛けなければならないコストが嵩みます。
求む、打開策
先述の通り、近頃はニコニコ動画やYouTubeと言った動画サイトが非常に人気で、帯域を圧迫しています。NHKでも動画配信が予定され(NHKオンデマンド/12月サービスイン予定)、これから更に伸びることが予想されます。では、これを打開するにはどうしたら良いのか。これの解の一つに、マルチキャストがあります。これはどのような技術でしょうか。
通常動画を配信すると、1人当たり一本のコネクションが張られ、700kbpsの動画を1000人が視聴したとすると700Mbpsのトラフィックが発生する事となります。また、サーバが送信するパケットの宛先は受信者のIPアドレスとなっています。これがユニキャストと呼ばれます。
一方マルチキャストの場合は、視聴者が居るか居ないかに関わらず、とりあえず動画の送信をします。パケットの宛先はマルチキャストアドレスとなっており、各ルータは受信者の居る方向にだけパケットをコピーし、送信します。
ディスカッション - インターネットを救うには。
今回も、グループを作ってディスカッション、及びその内容の発表を行いました。今回の内容は「インターネットを救うには」という内容でした。
私の居たグループの提案
まず、インターネットはニコ二コ動画やYouTubeと言ったオンデマンド型の動画配信サービスが流行っているため、マルチキャストは有効な手段ではない。なので、発生してしまうトラフィックをどうにかして減らす方向で考えた。
これには、トラフィックをISPの網から外に出さないのが一番の有効な策と考え、これを実現する為に、トラフィックが特に多いサービスを狙い撃ちで対策する方法を考えた。 まず、ニコ二コ動画を例に挙げて説明する。まず、ニコ二コ動画のメッセージサーバ、及びその他アップロードサーバなどは今まで通り中央に置いておく。そして、これのミラーサーバ(又はキャッシュサーバ)を各ISPに設置する。これにより、ISPより先の回線に無駄なトラフィックを発生させずに済むことができる。
これの利点として、以下のことが挙げられる。
しかし、欠点として以下のことが挙げられる
- ISPの数だけサーバ設置等・メンテナンスのコストが発生する
- 既に類似のサービスが寡占状態で存在する(アカマイ)
他のグループの発表
他のグループのものとしては、P2P型の分散システムを利用することによる案や、海外との時差を利用する案などがありました。
参考・引用資料
- 動画配信時代に伴うインターネット崩壊の危機への挑戦
- IPマルチキャスト初歩の初歩
- 藤井直人氏,IPMI Worksyop 2000/8/2資料
- ISPから見たブロードバンドトラフィックの傾向
- 長健二郎氏,JPNIC総会講演会資料
最後に
また、今回はそこら辺に寝転がってたマルチキャスト好きなWIDE研究員に少し解説をしてもらったりしました。感謝。