ディズニーランドですか?

 茨城県筑波大学。11月を過ぎた辺りから、大学内はどこもかしこもピリピリとした雰囲気に包まれていた。人通りが多い場所には片端からチラシが貼られ、窓という窓は紙が貼られ。「筑波大学」という腕章を付けた人間が学内を忙しく歩き回る。そして、職員に混じってじろり、と凄みを聞かせている、茨城県警の腕章を付けた人間まで。まるで、学徒運動が始まる直前のような緊張感。
 そして迎えた11月12日。その日の筑波大学は、これまでにない緊張感に包まれていた。学内の通行は規制され、スーツ姿の人間がそこかしこに立っている。
「なんだ、この緊張感は。」
一限目の講義に遅れ、急いで教室に急ぐ私は驚いて自転車の速度を落とした。ここ暫くの筑波大学は異様な雰囲気に包まれていたが、ここまでの緊張感を感じたのは、これが初めてだ。
「あの、すいません。こちら通れないんですよ。」
雰囲気に飲まれ、呆然としている私に声を掛けてきた筑波大学の職員の方。
「申し訳ないです、こちらに自転車止めていただけますか。……あー、止められる場所あるかな。」
「わざわざすいません。」
「いえいえ。こちらこそすいません。」
「……ああ、もしかして今日ですか。」
「ええ、そうなんですよ。今日は、あちこち通行止めでして。」
そうか、今日だったのか、と合点が行く。ここ二週間近く雰囲気のオカシイその理由を思い出した。<--中略-->

「なぁ、そろそろいこうぜ。」
編集部で和んでいる後輩に声を掛けた。三人連れ立ち、学内中央を目指す。しかし、いつもの道も悉く閉鎖されており、外周経由で大学中央を目指す事となった。目につくのは、幾種ものアンテナをおっ立てた、黒塗りの国産高級車の群れ。それが、いつもと違う筑波大学をより際立たせていた。<--中略-->

「それじゃ、私をお車だと思って。手を振る練習をして下さい!」
そう叫び、茨城県警のイソさんは手を振りながら道路の向こうから笑顔で、手を振りながら歩いてきた。
「イソさーん!」「イソー!」「いそーソー!ソッソッソアーッ!」
まるでデ○ズニーランドのパレード。キャストがミッキーに手を振るお作法を教えているようであった。ただ一つ違うのは、その練習役の茨城県警「イソ」さんが、非常に人気ものになっていることであった。
「これ、まるで出会い系だよな。イソさんと、筑波大生(女性)の。」
ボソり、と呟いたM2の理系学生らしい人の呟きが印象的であった。そうして、お見送りの準備は完了した。

 そうして、天皇陛下・皇后、スペイン国王・王妃のお見送りの準備は整えられ、非常に紳士的な態度で、しかしアットホームな雰囲気でお見送りは行われた。その、非常に理想的なお見送りの陰の立役者として、茨城県警「イソ」さんが居たことを、私は歴史の目撃者としてここに記す。

後記

うわぁぁぁあん!こういう文体難しいよー!